「映像制作のできる友人に、撮って出しエンドロールをお願いしようと思うんですが大丈夫でしょうか?」という質問を時々お客様に頂くことがあります。
結婚式のフィナーレの演出として、今や定番となっているエンドロールですが、制作の裏側をご存知でしょうか?
そこで今回は、私たちのようなウェディングの映像業者が、普段どのような流れでエンドロールを制作しているのか。当日の舞台裏をご紹介するとともに、果たしてご友人の方でも、当日の撮って出しエンドロールをつくる事は可能なのかどうか?について触れていきたいと思います。
今後のご参考になれば幸いです。
撮って出しエンドロールとは
撮って出しエンドロールとは、その名の通り当日撮影した映像をその場で編集し、披露宴のフィナーレに上映する演出ムービーです。
当日の映像をBGMに合わせて編集し、列席者のお名前が映画のスタッフロールのようなイメージで上映されます。ついさっきまで見ていた映像が、その場で流れるライブ感。新郎新婦とゲストで創り上げた「結婚式」というひとつの作品をフィナーレに楽しむ事ができます。
では、この撮って出しのエンドロールは、結婚式当日どのようにしてつくられているのでしょうか?私たちfirst film(ファーストフィルム)の1日の流れを例にご紹介していきます。
エンドロール作成時の注意ポイントについては、自作した場合と業者に依頼した場合どちらにも当てはまるので<結婚式のエンドロールを作成する時に気をつけたい8つのポイント>を是非参考にしてみてくださいね。
※あくまでもここからご紹介する内容は、first film(ファーストフィルム)の流れです。他のムービー業者さんによって異なる部分もあることをご了承ください。
撮って出しエンドロールに必要なスタッフ
最初にエンドロール制作に携わるスタッフの紹介をします。
実際には、当日映像を手がけるスタッフのほか、会場の特性等を知りつくしているアドバイザーの存在があったり、ロール(ゲストのお名前)の部分だけを専門的に作成するスタッフがいたりしますが、今回は当日の実制作に関与するスタッフをご紹介します。
(1)カメラマン
最近ではビデオグラファーとも呼ばれていますが、結婚式や披露宴の会場で動き回って新郎新婦やご両親、そしてゲストを撮影するのがこのカメラマンです。
カメラマンについてはこれ以上の説明は不要ですが、もしエンドロールのクオリティーを左右するのがカメラマンと、この後説明する編集マンのどちらか?と聞かれれば極論カメラマンになると思います。それだけ、カメラマンの経験や技術、そしてセンスが撮って出しエンドロールのクオリティーには大きく影響します。
カメラマンについてもう一つ補足しておきますと、結婚式の撮影は主にエンドロール撮影と記録撮影の二つに分かれますが、両方撮影できるカメラマンとどちらかのみ撮影できるカメラマンが存在します。ここでお伝えしたいことは、結婚式の撮影ならエンドロールであろうが記録ビデオであろうが、なんでも撮れるというわけではないということです。
今回は深く説明しませんが、それぞれの撮影にはそれぞれの撮り方やコツがあり、特にエンドロールに限っては一般的な撮り方やコツはもちろんのこと、綺麗な絵や構図にするセンスが求められる撮影内容になります。
(2)編集マン
エンドロールエディターと呼ばれたりもしますが、皆さんが想像されるように、モニターを幾つも並べて、パソコンのアプリと、なんだか難しそうな波形やパラメーターを操って、撮影した動画データを組み上げていくのが編集マンです。
カメラマンの説明をした際に、極論エンドロールのクオリティーはカメラマンの能力に依存すると説明しましたが、カメラマンの撮れ高(撮影素材の収穫状況)は確かにクオリティーに直結します。しかし、仮に撮れ高が多少悪くても形にするのが編集マンの仕事であり、撮れ高がよければ、より一層良いエンドロールに仕上げるのが編集マンの腕の見せ所となります。逆にせっかくの撮れ高が良い映像でも編集マンのクオリティが低ければ、活かしきることが出来ず仕上がりも”いまいち”なものになってしまうので、やはり編集マンの能力もクオリティーを左右してきます。
冒頭で触れた「編集はいったいどこで誰がしているのか?」についてですが、編集する場所については結婚式場によって異なります。会場の空いている客室や、パブリックスペース、宴会場の側の作業場やバックヤード(従業員用通路や倉庫など)で行っています。
(3)2名体制で制作
撮って出しエンドロールについては、カメラマンと編集マンの2名体制が基本です。
よく「さっきまでカメラマンが目の前で撮影したのに、エンディングで映像ができててすごい!」とおっしゃる方がいますが、実際には会場で撮影するカメラマンとは別に、会場のバックヤードや別室にて編集マンが、順次素材を受け取り、段階的に編集を進めていることがほとんどです。
内容によっては、カメラマンと編集マンを兼務して1人で行う場合もあります。例えば挙式までを撮影したエンドロールの場合ですと、挙式後から披露宴の終盤までは十分な時間がありますので、そういった場合に限り撮影したカメラマンが挙式後からはパソコンに向かって編集を行います。
エンドロールに必要な機材
それでは次に当日の制作作業において必要な機材を紹介します。
事前準備の詳細は割愛しますが、エンドロール上映の際にゲストのお名前を流す(ゲストロール作成)準備は、挙式当日行いません。
その理由を簡潔に解説しますと、当日にゲストロールを制作するような時間はなく、カメラマンが撮ってきた素材(映像)をパソコンに取り込み、つなぐことに当日は集中しています。
これから紹介する必要な機材はあくまでも当日に必要な機材となりますので、あらかじめご了承ください。
(1)編集に必要な機材
・ノートパソコン(可能であれば2台)
※編集アプリがインストールされたハイスペックノートパソコン。メインで使うものと、万が一メインのパソコンに機械トラブルが発生した場合に備え、予備のパソコン1台
・完成した映像をDVDディスクにするオーサリングアプリ
・DVDドライブ
・DVDディスクとDVDケース
簡単になりますが、必要な機材や備品は以上です。
ノートパソコンはコンセントから電力をチャージしながらの作業となりますし、会場によっては編集場所とコンセントが離れていたりすることもあるので、延長用のACタップやカメラの型によって収録するメディア(SDカード、CFカードなど)が異なったりしますので、カードリーダー等も用意したりするケースもあります。
(2)撮影に必要な機材
・メインカメラとサブカメラ
・バッテリー
・収録メディア(SDカードなど)
上記は、最低限の基本のセットです。
この他に撮影に応じて、交換レンズや三脚、一脚、レール、ステディカムなどを使用する場合もあります。
撮影においても編集と同様で、カメラの機械的なトラブルが絶対起こらない保証はないため、やはり予備機も準備して、不足の事態に備えています。
(3)機材のまとめ
パソコンやアプリケーション、カメラやレンズ等のメーカーや機種について具体的には全く触れていませんが、使用している機種やアプリは映像業者によって様々。
またどのカメラが良いか、どのパソコンとアプリケーションが良いかは、使う人の能力や経験、そしてどのようなエンドロールにしたいかで選択が変わってきたりします。
実際にエンドロールを製作する上でカメラはSONYの機種を使う人も、Canonを使う人もPanasonicを使う人もいます。編集のアプリケーションもPreimiereを使う人、Final Cut Proを使う人、EDIUSを使う人と様々です。
当日の撮影と編集のタイムスケジュール
実際に結婚式当日、カメラマンと編集マンはどのような流れで動いているのか?カメラマンや編集マンの立場での1日の動き(流れ)をご紹介していきます。
当日をイメージして頂きやすいように、今回は「挙式時間は11時」「披露宴の開始時間は12時」の設定で解説を進めていきたいと思います。
※挙式や披露宴開始時間を始め、その他の流れは標準的な進行を例にしています。進行は挙式と披露宴を運営するゲストハウスやホテルによって差異がありますので、進行時間はあくまでも一例です。
(1)全体のタイムスケジュール
08:00 挙式時間の3時間前に現場入り
現場到着後、編集場所や撮影場所の確認、機材のセッティング
09:15 ゲスト来館前の会場(挙式場、宴会場、受付、建物外観など)撮影
09:45 メイクルーム(ブライズルーム)にてお支度風景の撮影
10:00 館内やチャペル、または外に出てロケーション撮影
<※編集はこの頃より撮影素材をもらって作業スタート>
10:30 挙式リハーサル・受付撮影
11:00 挙式撮影
11:30 挙式後イベント(フラワーシャワー、集合写真など)撮影
12:00 披露宴(新郎新婦入場、挨拶、乾杯、ケーキ入刀など)撮影
13:00 新郎新婦中座撮影
13:20 ドレスチェンジ再入場撮影
<※撮影プランがお色直し入場までの場合はここで撮影終了>
13:35 編集終了・上映用DVD作成へ
14:00 新婦手紙
14:30 お開き・エンドロール上映
15:00 新郎新婦、ゲストお見送り終了
15:30 片付け、撤収、現場終了。
(2)カメラマンの流れについて
■1日の動き
タイムテーブルの通り、挙式の3時間前を目安に会場に入り、まずは持ち込んだカメラのセットアップを始めます。
また、改めて当日の進行の流れや、会場の動線等を確認します。それらが終わるといよいよ撮影が始まります。
最初はまだゲストが入っていない受付でウェルカムボードを撮影したり、会場や建物外観を撮影したりしながら、花嫁花婿のメイクが仕上がるのを待ちます。
メイクが仕上がるといよいよ花嫁花婿との撮影がスタートします。メークルーム内での撮影はできないこともありますが、メイクアップ以降は基本的に花嫁花婿と一緒に行動し、ロケーションイメージ、リハーサル、挙式本番、披露宴と撮影を進めていきます。
撮影しながら、区切りの良いところ、例えばメイク撮影終わり、リハーサル終わり、挙式終わりというような時に、編集マンの元へそれまで撮影したムービーデータを受け渡しにいきます。
■撮影が終わったら
カメラマンとしての業務が終わるのは、撮って出しエンドロールの種類にもよりますが、一般的なエンドロールは、挙式・フラワーシャワーまでのタイプか、披露宴の再入場まで撮影するのタイプとなるため、該当シーンの撮影が終わると、あとは編集マンの側で編集を見守りながら、NGテイク等の判別アドバイスなどをしたりします。
もう一つ重要な業務として、編集マンが宴会場からどの程度離れた場所で作業しているかにもよりますが、披露宴の進行状況を時々チェックし、極端に進行が遅れてないか、少し早めに進んでいないか等を確認し、会場の進行状況を編集マンに伝える業務も行っています。
(3)編集マンの流れについて
■機材の準備&確認が重要!
次に編集マンですが、会場に入る時間は基本的にカメラマンと変わりはありません。
会場に入ると、編集する場所でPCや各種デバイスを接続し、編集環境を整えます。
そして、上映時に再生不良等がないように、当日セットしたパソコンから再生テスト用のDVDを作成して、上映する宴会場のプレイヤーで再生チェックを行います。
また、ゲストロールやラストメッセージ等が入る場合には、現場でも原稿の最終チェックを行います。
編集環境のスタンバイ、再生チェック、注文内容の再確認を行いながら、カメラマンが素材を届けに来るのを待ちます。(会場の広さやカメラマン側の撮影負荷にもよりますが、編集マンの方から収録素材を受け取りにカメラマンのいるところへ向かうこともあります)
■「上映する」ということが最優先
素材が届いたらいよいよ編集開始です。素材を取り込み、スローモーションをかけたり、色の補正をかけたりしながら、シーンをつないでいきます。
カメラマンの流れで触れたように、素材は区切りの良いシーンごとに順次届けれらますので、各シーンの編集を順調に終えて、次の素材の到着を待てるぐらいが理想の編集ペースです。反対に、素材はどんどん到着するけど、編集が一向にはかどらないとなると、最終的には上映に間に合わなくなってしまうので、まずは全体を通してつなぎ終えることが最優先です。
カメラマンは撮影すべきイベントが 一通り終了することで必然的に撮影業務も終わりを迎えますが、編集マンの場合は何かのイベントが終わったからといって、編集業務が終わるわけではありません。
ここがカメラマンと編集マンの一番の違いになりますが、編集マンの場合は余裕を持って、お開きの45分前(タイムスケジュール上だと13:45の箇所)を目標に編集の完成を目指します。そのために逆算して、すべての作業をします。カメラマンから運ばれてきた素材をやみくもにつないでいると、気がついたらお開きの時間になっていたということではよくありませんので、編集マンは常に時間を気にしながら作業することが重要なポイントになってきます。
全体のタイムテーブルはあくまで一般的な流れとなりますが通常、再入場してからお開きまでは1時間程度しかありません。
再入場のシーンをカメラマンが撮影し、素材を運んで来る頃には、それ以外の部分は全て終えているというのが時間配分の一つの目安です。
最新の素材(再入場シーン)を入れたらDVD作成の作業もあります。DVDが出来上がったらきちんと再生されるかチェックする必要もあります。
この仕上げと確認にも10分〜20分程度の時間がかかるため、編集自体は再入場イベント後、15分程度で終わらせて、残りの15分で仕上げ作業をすると、もうお開き30分前のイベント(通常祝電披露もしくは新婦手紙の時間帯)になります。
何か一つでもこの終盤にトラブルやミスがあると、すぐにお開きとエンドロール上映の時間は来てしまいますので、編集マンは常に時間に余裕を持って作業をすることが必要不可欠です。
このように、編集マンというのはゲストや新郎新婦の目の前に姿を見せないため、存在があまり知られませんが、カメラマンと力を合わせてエンドロールを影で支えています。
撮って出しエンドロールが友人ではできない理由
これまで、主に当日のエンドロール業務に関しての舞台裏を紹介してきましたが、いよいよ最後に今回の記事の冒頭でふれた「「映像制作のできる友人に、撮って出しエンドロールをお願いしようと思うんですが大丈夫でしょうか?」」という質問にお答えしていきたいと思います。
(1)「結婚式の経験」が必要不可欠
いきなり質問の核心に触れることになりますが、テレビCMやミュージックビデオなどのカメラマンや編集マンとして活躍しているクリエイターが知人にいるとして、その方でもエンドロールを作成する能力はあります。
ただ、一番の課題は「全体のタイムスケジュール」で説明したように、カメラマンであっても編集マンであっても当日の進行を大幅に遅延させるようなことがあってはいけません。
仮にそれが友人という立場であったとしても、エンドロールの撮影や映像の完成を待つために1時間、2時間といった時間延長になるようなことは避けなければなりません。
会場にご迷惑がかかるというよりも、新郎新婦がお招きしたゲストの皆様に大変なご迷惑がかかってしまいます。
遅延させないためには、挙式や披露宴、そしてその前後の時間がどのように進んでいくかを十分に把握し、多少予定通り進まなかった場合でも、どこかでその分を取り返す解決策を持っている必要があります。これはつまり経験が一番モノを言うということです。
(2)結婚式や披露宴はやり直しがきかない
経験に通じるところがありますが、例えばTVCMやミュージックビデオの撮影や編集は何かうまくいかないことがあれば、テイク2、テイク3と同じ演技を繰り返して撮影したり、編集も同様に徹夜してでもより良い映像作品に仕上げることができます。
しかし、結婚式はテイク2、テイク3と何度も挙式中のキスを撮影するわけにはいきませんし、イメージ通りの映像編集ができないからといって、完成するまで披露宴のお開きを伸ばしてもらうわけにもいきません。
この一見あたりまえなことが、ウェディングのビデオクリエイターとCMやミュージックビデオのクリエイターとでは180度違います。
(3)拘束時間が長く、料理を食べる余裕はほとんどない
これは、エンドロールをお願いした友人が挙式や披露宴に招かれたご友人という場合に限る話ですが、挙式の3時間前から会場に入り、準備をし、撮影や編集を進めています。カメラマンも撮影が終わるまで、編集マンも編集が終わるまでは、ちょっとした休憩はできても長々と友人と話をしたり、料理を楽しんだりという時間はほぼありません。
せっかく友人を結婚式に招待しても、エンドロールの制作のためにその友人は結婚式やパーティーをゆっくり楽しめることはありません。
(4)友人にお願いできる映像制作の種類
撮って出しエンドロールの制作は、たとえ他業界で活躍するプロのクリエイターだとしてもリスクが大きい事をここまでご紹介してきました。何度も言うように撮って出しエンドロールは、当日上映が絶対なので映像に関する知識だけではなく、結婚式に関する知識も必要です。でも、なにか友人にお願いしたいという思いがあるのであれば、余興ムービーやプロフィールムービーなど事前に制作ができるものがおすすめです。
事前に制作できるものであれば、上映確認が事前にできるので上映できないというリスクはありません。また、業者では作ることのできない新郎新婦をよく知るご友人だからこそ作れる温かみのある映像を作れるはず♪
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ビデオグラファーとエンドロールエディターはそれぞれ全く違う作業を行いますが、当日はお互いが連携して、助け合いながら一つのエンドロールを作成しています。
しかし、残念ながら業者に依頼すれば100%安心!という訳ではありません…自分たちの目でサンプルを見たり、カメラマンと事前に打ち合わせをしっかりするなどして、結婚式という人生の大切なイベントで悔いの残らないような選択を是非してくださいね。
今回の内容が今後のご参考になれば幸いです。