前回の「結婚式のスタジオポーズ写真は必要?(前半)」では、スタジオ写真とスナップ写真の違いを細かく見ていきました。
<前回のまとめ>
・スタジオ撮影の技術と、スナップ撮影の技術は違う。
・カメラマン全てが、両方撮れるわけではない。
・両方撮れるカメラマンならば、スナップ撮影でスタジオ撮影の代用をしても大丈夫。
・撮るか撮らないか迷っている場合、代々スタジオ写真残しているのであれば、撮影した方が良い。
・撮らないと決めた場合でも、親族集合写真だけは出来るだけ撮っておきたい。
今回「結婚式のスタジオポーズ写真は必要?(後半)」では、下記の2点についてです。
スタジオ写真:撮る場合
(1)ポーズの種類
スナップ写真とは別に、スタジオ写真を撮る事に決めました。
その場合、一般的には下記の3ポーズになります。
・ウェディングドレス・白無垢で2人の全身を撮る(ここで言う2人は「新郎新婦2人」の意味です。)
・親族集合写真を撮る
・お色直し後、2人の全身を撮る
もちろん、お色直しせずに一着通しの場合は、2ポーズになります。
(イメージチェンジでの撮影は、人それぞれです。)
さらに和装の前撮りがあったり、当日着ないドレスの撮影をした場合、さらに追加となります。また、新郎側の家族写真(新郎だけVer.と新郎新婦2人入りVer.)、新婦側の家族写真(新婦だけVer.と新郎新婦2人入りVer.)の撮影も希望があればもちろん撮る事が出来ます。ただし、家族や親族と一緒に撮影する場合は、全員の衣装の兼ね合いもあるので、通常、当日の撮影のみとなります。
会場によっては、前撮りのタイミングでスタジオの撮影も済ませてしまう会場もあります。
その分、当日は集合写真だけなので、少し時間に余裕が出ます。(とはいえ、当日は新郎新婦はのんびりしているヒマはありません。)
(2)ウェディングドレス・白無垢で2人の全身を撮る
photo by Fukaura
当日撮影の場合、ウェディングドレスでの撮影が一番最初ですので、メイクが仕上がり次第、写真スタジオに向かいます。
スタジオには、カメラマンの他にアシスタントが数名待機しています。また、スタジオでは、ヘアスタイルの詳細を伺っていない事がほとんどなので、通常メイクさんも一緒に立ち会います。
そして、スタジオの天井から降ろしているバック紙が敷かれているので、そこに立ちます。
(3)写真映りが良くなる4つの立ち方のポイント
1、新郎新婦並んで立って、お互いに少し内向きに立つ。ハの字のイメージで。
2、カメラに向かって体は真正面に向かない(ドーンと大きく証明写真のように写るから。)
3、体の向きはハの字なので斜めだが、顔の向きだけは首をグッと回してカメラの方を見る。
4、肩の力を抜く
上記の立ち方を意識するだけで、写り方は全く違って来ます。
ハの字に立つのは、立体感を出すため、またドレスのウエストのラインが見えるようにするためなど色々と理由はありますが、カッチリとしたポーズ写真の場合、ほぼこの立ち方となります。
スタジオの場合は、アシスタントが全てサポートしますので直してもらえますが、スナップカメラマンに撮影してもらう場合は、上記の点を自分でも注意しましょう。(あくまでも、スタジオ的なフォーマル撮影の場合です。)
(4)何よりも大切なのは笑顔!
photo by Fukaura
しかし、立ち方よりもさらに大切なのは表情です。
とにかく笑顔を要求されます。
なぜなら、結婚式だからです!!
人生の中で、自分が選択した最良の日であるはずだからです!!
笑顔は、人によって得手不得手があるようです。
職業がら常に笑顔の方、もしくはたまに片頬で微笑まれる方、様々です。
時には、今日は絶対笑わないと決めて来た、というご新郎様も。
当日お二人に初めて会うスタジオカメラマンは、限られた時間の中で、良い笑顔が出るまで試行錯誤して撮影を続けます。写真を撮られ慣れていたり、どの表情ならば、どう写るかというのを自分で分かっている場合、撮影はスムーズに進む場合が多いようです。
写真の中での笑顔というのは不思議なもので、本人はその場では、かなりニッコリ笑顔のつもりでも、実際は微笑んでいるくらいにしか写りません。ですから、友達に向かってニコッとする位の大きな笑顔、ちょっと大袈裟かなという位の笑顔で、やっと楽しそうな笑顔で写る事になります。
(5)カメラマンはなぜ、笑顔を撮ろうとするのか
photo by Fukaura
もちろん、普通の表情のままでは楽しくなさそうだからです。
いつもと違う状況で、いつもと違う服を着て、知っている人がほとんどいないスタジオで、ライトをたくさん浴びて立たされた時の普通の表情は、緊張と不安の方が強く出るのです。
そんな状態の「普通の表情」を、カメラマンが笑顔を引き出す努力をせずに撮影した場合、自ずと結果は見えますね。楽しくなさそうなんです。人生の伴侶が見つかって結婚するその日に、楽しくなさそうなんです。それ、ダメですね。商品として。
高いお金を払って撮影する結婚式の記念写真を、楽しくなさそうな表情で撮影されて、それが一生残る写真だとしたら文句のひとつも言いたくなりますね。
そこで、カメラマンはしつこく笑顔を撮ろうとするのです。文句が怖くて、という意味ではなく、あくまでも一生一度のおめでたい日の撮影を背負っているという使命感です。
スタジオカメラマンの撮影持ち時間は約10〜15分。その間、なんとかリラックスして頂いて、普段通りの柔らかい笑顔を引き出して撮影したいという気持ちのみで動いています。
(6)撮影はカメラマンとの共同作業
photo by Fukaura
その点、スナップカメラマンは有利です。
数時間の前撮りがあった時には、新郎新婦とはすっかり打ち解けているはずです。ただ、それは新郎新婦が撮影に協力して、共に作り上げた時間を共有したからです。そのため、当日は友人に見せる笑顔と同じ笑顔を、スナップカメラマンは朝一番から撮影出来るのです。
スタジオ撮影も同じです。
プロに撮ってもらうのに、協力するなんて矛盾している、と感じるかもしれませんが、スタジオでの撮影は、撮る側と撮られる側の共同作業によって、より美しい笑顔が引き出されると言っても良いでしょう。
(7)親族集合写真を撮る
親族集合写真は、撮影に入る人を決めるところから始めます。
この辺りは、完全に親御様との相談が必要になるはずです。というより、親族集合の主導権は両家それぞれの親御様に譲ってしまった方が、すんなり進むようです。
スタジオでの集合写真では、撮影に参加する全ての方の顔が見えるように立ち位置の微調整をします。そのため、時間がかかったり、次々と立ち位置の交換や移動があるかもしれません。また、乳幼児が多い場合、子ども達の動きを見計らってシャッターを切るので、大人はそのタイミングに合わせた撮影になります。
イスは座る人がほぼ決まっているので、スタジオの指示に従ってください。
親族集合写真は、写真スタジオの得意とする部分です。スタジオ写真を撮らない方向で決めた場合でも、せめて集合写真だけは撮っておくことをお勧めします。
親族が正装して一斉に集まる機会というのは、結婚後もそれほどありません。また、スナップでガーデンやテラス等での全員集合写真もありますが、あちらは、全員の顔が完全に写るわけではないので、雰囲気重視の別の写真と捉えて置いた方が良いでしょう。
あとは、皆さんで大きな笑顔を!!
(8)お色直し後、2人で全身を撮る
photo by Fukaura
披露宴も半ばまで進むと、お色直しの中座です。
新郎新婦2人で同時退場の場合と、それぞれ時間差で退場の場合があります。単純に、着替えの時間の差です。新婦は、ヘアメイクも変えて、ドレスも着替えるので時間がかかります。そのために、先に退場します。
(9)和装の時の注意点
photo by Fukaura
和装への着替えの場合、より時間がかかるので少し慌ただしいかもしれません。
ただ、和装になって具合が悪くなり倒れる方もいらっしゃって、撮影が中断ということもたびたびあります。(着付けだけではなく、緊張とお酒と色々な原因が混ざっています。)
もし、着付けの際に締め付けが苦しいようでしたら、我慢せずに少し調整してもらいましょう。我慢して、気分が悪くなって倒れてしまうと、持ち直すまでに時間がかかってしまいます。新郎新婦は、ゲストの皆さんを待たせてしまっている、という気持ちの焦りが出て来るので、完全に回復しないうちに会場に戻ろうとします。すると、会場で具合が悪くなると言うマイナスのサイクルになってしまいます。
我慢は禁物です。すぐ対応出来るプロのスタッフが揃っているはずですので、ひとまず相談しましょう。
お色直しの撮影は、ウェディングドレスの時とほぼ同じですが、少しポーズを変えて撮影するスタジオもあります。カメラマンとアシスタントの指示に従いましょう。
ウェディングドレスの時よりも、お酒も少し入って緊張もほぐれているので、前よりも素敵な笑顔が出る方が多いです。
(10)写真とお酒
photo by Fukaura
この時に1点気をつけるべき事は、新郎の飲酒の量です。
お酒に強くて、いつもたくさん飲んでも大して変わらない、もしくは楽しくなって饒舌になるなら大丈夫です。
お酒にそれほど強くないけれど、乾杯の後にどんどん飲まされてしまって、一気に酔いがまわってしまった場合が心配です。顔が赤くなるか、白くなるかです。
撮影の時に、赤い顔か白い顔で写るようになります。皆さん、そこをかなり心配されますが、現在デジタル処理で色は変えられますので、気分が悪くならなければ問題ありません。
顔色の処理をしてもらえるかどうか心配なようでしたら「顔の色を修正してください。」とはっきり伝えておきましょう。結婚式の件数が1日に10件以上ある会場では、穏やかな会場も、裏側ではスタッフはめまぐるしいスピードで動いています。「こっちの気持ちを汲んでくれるかな、どうしよう。」と迷っている事は、口に出してしっかり伝えましょう。当日のその場でならフォロー出来る事も、結婚式が終わってしまってからでは、フォロー出来ない事もあるからです。
もし、お二人のうちどちらかの体調が悪く、すぐに撮影出来ない場合、結婚式のお開き後に撮影する事が可能です。ただ、メイク直し直後、着付け直後の方が着崩れがなかったりと状態が良いので、本来は、中座のタイミングでの撮影が望ましいです。
2次会、3次会と続くかもしれませんので、お酒は少し抑えめにしておくと良いかもしれないですね。
スタジオ写真:撮らない場合
photo by Fukaura
ここでは、完全にスナップカメラマンが撮ることを前提としてお話しします。
(スタジオがない会場でポーズ写真の会社の撮影は除く。)
(1)ウェディングドレス・白無垢で2人の全身を撮る
photo by Fukaura
スナップカメラマンが撮影する場合。
スタジオ撮影の代わりになる全身撮影をしっかりして欲しい、と言うことを打ち合わせの段階で伝えましょう。ポーズの付け方に慣れてるカメラマンを検討してくれる可能性があります。特に白無垢の場合は、型付けに時間がかかるので、和装の型付けが1人で出来るカメラマンが担当するか、アシスタントを1人付けてくれるかもしれません。
しかし、挙式のお日柄が良いと、スタッフの数が足りない場合があります。その場合スナップカメラマン1人で来る場合があります。
スタジオ撮影のようにカッチリ撮影する場合、カメラマンから色々と指示があるはずです。
もしカメラマンからの指示が全くない場合、そのまま撮影が進む可能性があります。
介添えさんやメイクさんが近くにいるなら、下記の点を「ここ大丈夫ですか?」とそっと確認してみましょう。フォッティングの時のように、鏡の前に立っている訳ではないので、自分では確認が出来ないからです。
(2)ウェディングドレスの場合の注意点
・体の向き(ハの字)
・顔の向き
・ベールが整えられているか
・アクセサリーは全て付いているか(移動中にイヤリングが落ちる事が多々あります。)
・ドレスの裾がきれいに広がっているか、もしくは自分の後ろにしっかりまとめてあるか。
・前髪が目にかかっていないか。
・ブーケはきちんとした向き(リボンが自分の方)で、カメラの方に向いているか。
・新郎はグローブ(白い手袋)も持っているか。グローブの向きはあっているか。
・ブートニアは付いているか
・メガネをかけている場合、掛けたままで大丈夫か?
(3)白無垢の場合の注意点
・体の向き(ハの字より新婦は少し角度きつめ。新郎は、カメラの方に体を開く)
・顔の向き
・綿帽子の場合、顔が隠れないように少し上げる。
・裾、袖が整えられているか。
・末広(扇子)の持ち方は合っているか。
・新郎は、胸の家紋が両方見えているか。袖の家紋は見えないようになっているか。
・新郎は、白扇で羽織の襟を切っていないか。
基本の部分のみですが、スタジオでは、これ以上の注意点を全て複数人で確認して撮影しています。もしかして、スナップカメラマンがポーズ写真慣れしていないな…、と気づいた場合、持ち込みの場合はなおさらカメラマンチェンジは出来ません。上記の点を、気にかけておいて損はありません。
(4)親族集合写真は準備が必要
きっちりとした親族集合写真をスナップで撮れるかどうかは、会場によります。
前もって、担当者に確認しておきましょう。カメラマンを持ち込む場合、新郎新婦が会場側との中継ぎ役になって、当日うまくまわるようにある程度準備をしなければなりません。
人数が多い場合、会場側に撮影しやすい場所を準備してもらったり、イスの準備が必要だったりする場合があります。
会場側にも前もって伝えていないと、その場ですぐにイメージした通りのキッチリとした集合写真が撮れない場合もあります。また、ご挨拶やお手洗いに出てしまって、なかなか全員揃わない場合もあります。
スタジオ集合写真のタイミングは、親族紹介等全員が揃っているタイミングの前後で、全員でスタジオへ移動するので、○○さんが見当たらない!!ということは起こりにくいです。
そういった面も含めて、スナップで親族集合を撮影したい場合は、必ず会場担当者に相談しておきましょう。出来る事なら、打ち合わせにカメラマンも一緒に参加してもらうと、より安心です。
(5)集合写真はカメラマンの腕の差がハッキリ出る
ウェディングドレスも、白無垢も座った時の型がありますので、そこも気をつけたいところです。特に和装で、座った時に袖と裾のさばきがきれいに出来ていない場合は、見る人が見れば「何も知らない人が撮影したんだな…。かわいそうに。せっかく良いお召し物なのに…。」と映ってしまう場合があります。
特に、集合写真は親族でも和装の人数が多いので、全て整えるには人手と時間が必要です。
新郎家はきれいに整えたのに、新婦家は全て整えきれなかったけれど、もう時間がないので急いですぐに撮影して下さい、と会場側に言われかねません。そこで、粘れるカメラマンであれば良いですが、慌ててしまうと、そのまま撮影に入ってしまいかねません。
その点を考えると、集合写真は、スナップカメラマンに頼むよりも、スタジオに頼んでしまう方が効率が良いといえるでしょう。
いずれにせよ、どれくらいのクオリティで満足するかというところもポイントになって来るでしょう。
(6)お色直し後、2人の全身を撮る
photo by Fukaura
中座のタイミングで、フォーマルな撮影をする場合、再入場の直前になることが多いです。
ただ、時間は非常に短いです。
披露宴の会場がたくさんあって、1日の挙式が10件前後の場合、イレギュラーな動きをすると他の新郎新婦とのバッティング(鉢合わせ)が生じます。
新郎新婦が嫌がるのも、もちろんですが、会場サイドでバッティングをNGにしている場合、必要以上にいつものルートを外れて動き回ることは難しいのです。
「あそこの花の前で撮りたいです!!」と言ったとしても、そのタイミングでOKが出るかどうかどうかは、わかりません。お開き後、バッティングの可能性が無くなった段階で撮れるかもしれません。
全体の進行は会場専属のカメラマンでさえ、会場側の指示で動いているので、万が一持ち込みのカメラマンが自分の裁量で動いてしまった場合、他の披露宴会場にも影響が及びます。
(中座の退場がなかなかできない等)
撮影のタイミングと場所は、基本的にはお任せにした方が良いでしょう。どうしても撮りたい場所がある場合、撮れるかどうかは分かりませんが、カメラマンか会場の披露宴の責任者(インチャージ、キャプテン)に伝えるだけは伝えてみましょう。
中座のタイミングでうまく撮れた場合、お開き後は移動せずにその場で数カット撮影でお引き上げになる場合があります。
撮影時の注意点に関しては、ほぼウェディングドレス・白無垢の時と同じです。
参考になさってください。
まとめ
前編・後編の2回にわたって、スタジオ撮影に関して書きました。
餅は餅屋と言いますが、スタジオ撮影には、スタジオ撮影のノウハウがあります。
特に集合写真は、その差がハッキリ出るところなので、会場側で撮れる設備が整っている場合は、全て任せてしまいましょう。
写真やビデオは予算の都合で後回しにされてしまいがちですが、実は一生残る記録です。
記憶は段々薄れていきます。慎重に選んで、素敵な写真を残して下さいね。