一眼レフを使い始める時に一番やってみたい表現は何ですか?
きっとそれは多く答えが「背景をぼかして撮る写真」なのではないでしょうか。
結婚式の写真に限らず、花やペットや人物の背景をぼかして撮ってみたい方は多いと思います。どんな被写体でも背景が美しくぼけて、自分の撮りたい人や物が背景から浮かび上がる写真は、やはりチャレンジしてみたいものです。
今回は背景をぼかして撮影するための重要なポイントを4つに絞って見ていきます。
作例を使って、ごく簡単に説明して行きます。
一眼レフの基本的な設定等は今回は省略いたしますで結婚式で一眼レフをうまく使いこなすために知っておくべき3つの設定を熟読しておくことをおすすめします!
ポイント1:被写体に近寄る!!
実はプロカメラマンが写真初心者の方に一番多く聞かれる質問が「背景をぼかして撮るにはどうしたらいいですか?」という質問です。これは幾度となく(今でも)多く質問されます。
これだけスマートフォンやデジカメが普及しても、なぜかこの質問だけは絶えません。
本当に単純なことですが、背景をぼかすポイントは、まず被写体に近づく事!これが基本です。
例えば音楽系の雑誌等で、アーティストのアップの写真。目だけにピントが合って、あとは背景まで全てボケているという写真をよく見るかと思いますが、イメージとしてはそのイメージです。
ここでは、ズームレンズは使わずに、ボケの効果がよりよくわかる「単焦点」というレンズで撮った画像で見ていきます。
露出は固定で被写体に近づく事で「ボケ」の効果を見てみましょう。(男の子と背景の距離は一定です)
作例1:遠距離
レンズ50mm 絞り値F2
作例2:中距離
レンズ50mm 絞り値F2
作例3:近距離
レンズ50mm 絞り値F2
さて、この作例の様に、被写体に近づけば近づくほど背景はぼける事が分かります。
ポイント2:絞りを開けて撮る!!
絞りとは何のことでしょう?
結婚式で一眼レフをうまく使いこなすために知っておくべき3つの設定で詳しく説明をしています。
前回は、確実に撮るための技術的な部分の話をしましたが、今回は背景をぼかしてふんわりとした雰囲気を出す表現中心の撮り方についてお話します。
同じ距離と画角で、絞り値だけ変える手法で、背景をぼかして写真を撮ってみましょう!
ここでは絞りの値(F値)に注目して下さい。
作例1:レンズ50mm 絞り値F8(シャッタースピード 1/50)
作例2:レンズ50mm 絞り値F2(シャッタースピード 1/800)
絞り(F値)を変える事によって背景が大きくぼける事が分かるかと思います。
しかし、作例1と作例2のぼけ具合ではまだ足りないので背景をもっとぼかしたい場合、どうすればいいのか、3つめのポイントで見てみましょう。
ポイント3:レンズは望遠レンズを使う程に背景がぼける!!
作例1:28mm(広角レンズ) F2.8
作例2:200mm(望遠レンズ) F2.8
この作例は被写体となる男の子と背景は動いていません。
人物の大きさは変えず、カメラと被写体との距離とレンズの画角(広角レンズと望遠レンズ)を変えてあります。
広角レンズと望遠レンズではボケの量が大分違う事が見てとれますね。
画角が大きく異なるために、背景の一部が強調され、全く別の背景に見えますが、実は写っている背景は変っていません。
レンズの画角を変えるという事は、「ボケ」だけではなく背景の印象も変えてしまうという事です。
焦点距離(mm)の数字が大きくなる程、遠くの物を大きく写せる望遠効果が高くなります。ただ、この場合には被写体から離れなくてはなりません。
望遠レンズは遠くから撮ることを前提としているので、ある一定の距離を空けなければ、そもそもピントが合いません。そのため、被写体から離れる必要があります。
また、背景をぼかす表現をするならば、絞り値も開ける事が重要になります。
そのため、望遠レンズを使ってピントを合わせるのは最新のオートフォーカスを使ってもなかなか大変になってきます(もちろん何枚も撮って練習を重ねれば失敗は少なくなります。)
レンズの望遠側を使う際にはピント合わせにも注意しましょう。
さらに問題になってくるのは手ブレです。前回、結婚式での一眼レフ写真撮影、手ブレを減らす6つの方法でも書きましたが、カメラのレンズが望遠側になればなる程、手ブレしやすくなるので、併せて注意して撮影しましょう。
ポイント4:被写体と背景が離れれば離れるほど、背景はボケる!!
ということは、逆に被写体と背景が近ければ近いほど、背景はぼけないのです。
【1】〜【3】までを駆使してもどうしても背景がぼけない場合があります。
それは背景が被写体にピッタリくっついている場合です。(壁にもたれているとか。)
これは【3】までのテクニックを駆使してもどうにもなりません。
Photoshopなどの画像ソフトを使って無理して画像処理をすれば、何とかなるレベルです。撮影時にはどうにも出来ません。
ここで同じレンズで被写体を撮影し、背景だけ遠ざけていく作例を見てみましょう。(男の子とカメラの距離は作例1〜3まで同じに保っています)
作例1
作例2
作例3
この作例を見ると分かるように写真の「ぼけ」は被写体と背景の距離によって変ります。
「背景をぼかして撮る」という、いわば一番一眼レフらしい撮影方法を見て来ました。
この4つのポイントは1つだけで良い写真、納得のいく写真が撮れる訳ではありません。
4つのポイントの1と2、3と4、2と3と4などの組み合わせでようやく機能してきます。
何よりもこれらを踏まえた上で練習してみる事が大事になってきます。
注意点
最後に注意事項があります。
背景をぼかして被写体を浮かび上がらせる手法は上手く行けばとてもキレイな写真に仕上がります。ただ、この手法はピントを合わせるのが難しくなってきます。
なぜなら、ぼかす時にはピントが合う範囲が狭くなっているからです。
デジカメで撮影した後にカメラの背面液晶で撮った写真を確認すると思います。
しかし、実はこれだけではちゃんとピントが合っているかどうかは確認出来ません。
(1)撮影後、写真を拡大して確認するクセをつけるべし!
撮影後、カメラの背面液晶で写真を確認する際に、ピントを合わせたかった場所にピントがちゃんと合っているか、必ず拡大して(大抵虫眼鏡マークで拡大出来ます)確認するクセをつけましょう。
実際、パソコンなどの大きな画面で確認してみると、微妙にピンぼけして失敗している事が多くあります。ですから、できれば本番撮影前に何度も試し撮りをしてパソコンなどの大きな画面でピントが合っているか確認し、カメラのピント合わせのクセをつかんでから撮影をしましょう。
そして、撮影中は必ず何度もピント合わせを繰り返しながら撮影してみて下さい。
1~2枚撮ったら次は必ずまたピントを合わせ直しましょう。
(2)オートフォーカスをうまく利用するべし!
カメラでのピント合わせは、ほとんどオートフォーカスで合わせていると思います。その場合、カメラのシャッターボタンを半押しする事でピントが合う仕組みになっているはずです。
なので、1回押したっきりそのまま連写せずに、1~2枚撮るごとにシャッターボタンから指を離して、再度シャッターボタン半押しでピントを合わせ直してみましょう。
シャッターボタンを半押し連打してからシャッターを切ってみましょう。ピントがどこに合っているか、確認できます。
結婚式の入場や退場時のように新郎新婦が歩いていてピントが合いにくい時、運動会や動物の写真などの動きのある被写体を撮る時などは、AFモード(オートフォーカスモード)をコンテニュアスモード(キャノンはAIサーボAF ニコン、ソニー、ペンタックス等はAF-C オリンパスはAF-C等の名称)に切り替えると、より効果的です。
このモードは、シャッターボタンの半押しや、連写している時も常に動いている被写体を、カメラが自動で追ってピントを合わせ続けてくれるモードです。
ただし、ピント合わせは全てカメラ任せのモードであるために全部上手くピント合わせができている訳ではありません。しかも背景をぼかそうとするために、レンズの絞りを開いた状態や画角を望遠側にするためにどうしてもピンぼけしやすくなってしまいます。
いくらカメラ任せと言っても、少しは練習が必要になります。
軽く何度かカメラの動作を確認してみる程度で良いので、カメラに触れておきましょう。
(3)カメラの種類で性能もさまざま
一眼レフカメラの方が構造上どうしても一般的なコンパクトカメラよりもコンテニュアスモードの精度が良くなります。ただし一眼レフカメラのボディ側が最新の機種であっても、一昔前の交換レンズなどをつけて撮ってみると、レンズ内のピント合わせを担当するモーターが古いためにピントが追いついてくれない場合があります。
また、手ブレ補正機能がついていないレンズを使ってしまうと、初心者の場合手ブレしてしまいますので、レンズ選びは特に注意が必要です。(望遠レンズは出来るだけ手ブレ補正機能のついている物を選びましょう)プロでも価格帯の安い手ブレ補正機能のついてないレンズで撮影するとブレてしまう事があるくらいです。
通常の一眼レフカメラを中心に説明してきましたが、最近のミラーレスタイプのコンパクト一眼レフは、かなりのAF精度が保たれています。もちろんコンテニュアスモードも一般的な一眼レフカメラと遜色無い性能を持っているカメラもあります。また女性ユーザーを対象にしたデザインも多く、ボディも一般的な一眼レフカメラよりも小さくコンパクトなのでドレスやスーツなどにもよく似合うと思います。
これからカメラを買おうと考え中の方はミラーレスタイプの一眼レフもオススメです。
まとめ
今回は背景をぼかして撮るための4つのポイントを見てきました。
背景を出来るだけぼかして撮るための4つのポイントは、どれも注意して用いないと「ピンぼけ写真量産手法」になってしまいます。
現在はフィルムカメラの時代とは異なり、撮影し結果を見るまでの時間とお金はほとんどかかりません。テスト撮影した写真を、その場ですぐに見てチェック出来るので、ちょっとで良いので本番前にテスト撮影をしておきましょう。
一番上達した感が味わえる「背景ボケ写真」が上手く撮れるように、身近にいる家族や友人、花や動物など、撮りたいと思う被写体で早速テスト撮影してみましょう!